ボア:14.72mm(第4ピストン16.52mm)
ベル:284mmピストン:4本ピストン(第4ピストンサイド式) 本體仕上:ラッカー、ブライトシルバー、サテンシルバーの各モデルがあった。 |
|
BOOSEY & HAWKES 7674 Imperial Besson サテンシルバーモデル |
【外觀、仕樣】
現在の BESSON 968 GS Sovereign の元になったモデル。我々が「ユーフォニアム」と聞いて思い浮かべるユーフォニアムの形は、この樂器によって確立したと言っても良いと思ふ。基本的にはいづれも同じ仕樣だが、BESSONと B&H とでは、ピストンのボタントップ、トップキャップ、ボトムキャップの形状が異なる。特に、BESSON の方の獨特の形状のキャップ、斜めにごつく「Besson」と入ってゐるロゴ(型を使って刻印してあるため、ベルの内側からもうっすらその形が見える!)には、未だに根強い人氣があるやうだ。このかつての BESSON のキャップについては、今の BOOSEY & HAWKES では一切製造してゐないさうで、殘念至極である。また、マウスパイプのレシーバーの内径も、年代によっってサイズが異なる(1975年以降は、現在のラージシャンクが適用されてゐる)。
【音色、音程】
音色は、年代によって若干異なる(ベルの製法がまるで違ふせゐか?)ものの、朗々として、艶がある點は特筆であり、他のメーカーの追随を、未だに許さない感がある。特にサテンシルバーモデルの方は、實際に演奏に使ってゐて思ふのだが、案外明るく張りのある音がする。決して派手といふ意味ではないが、深みとともに明るさを備えてゐるやうに感じられるのだ。現行モデルの BESSON 968 GS Sovereign は、ベルが薄く、マウスパイプがフローティングになってゐるので、抵抗が少なくった感じがして吹き易くなった分、かつての味が失はれてしまったやうに感ずる。また、サテンシルバーの樂器が製造されなくなってしまったことも、實に惜しい。音程は、第5倍音のD、第6倍音のE♭、E、Fが著しく高く、第5倍音のCが掴み難い。
【こぼれ話】
かつては、「サテンシルバーのベッソン、B&H」は、ユーフォニアム吹きのあこがれの的だった。今と違って、「演奏しやすい」といふイメージを持ってゐたのではなく、「吹きこなすのは難しいが、きちんとした奏法を身につけると、とんでもなく素晴らしい音色になる」といふ風に思はれてきた。一説には、次第にサテンがとれて來て、こなれた音になって行くのだとか(笑)。まぁ、何にせよ、きちんと鍛錬を積まない限り、心に染み渡るいい音など出て來ないといふことは、今の樂器も變らないやうに思はれる。とっつき易さの問題ではなく・・・
B&H でサテンシルバーが廃止になったのは、1980年頃のやうだ。サテンは、選び抜かれた砂を地金に吹き付け、ザラザラした表面へと削って行く「サンドブラスト」といふ製法によるものださうだ。これによる粉塵の処理設備の義務化がイギリス國内にでもあったのだらうか、パッタリ製造が止まってしまった。この製法は、オートメーションといふ譯には行かない、職人の腕と目と勘が頼りになるものであらうから、合理化すべき對象とされたのかも知れない。
-----
平成15年9月23日
無斷轉載ヲ禁ズ
「ユーフォニアム講座」
http://www.euphstudy.com
Hidekazu Okayama