14/2/25 「外國人との取引」


 外國との取引が、このごろ多いです。面白いのは、アメリカ人、ドイツ人、イギリス人では、随分對應が違ふといふこと。それも、その對應が、工業製品の質にも近いといふこと(笑)。

 アメリカ人は、いいところを大げさに褒めます。「ピストンの動きが最高!」「新品同樣、最高の状態!」などなど。でも、届いてみると、ピストンは良くても抜差し管がボコッと凹んでたり、見た目は奇麗でもベルが付け根の方から楕圓に歪んでたり(笑)。あと、多いのが、平氣で別の部品を着けちゃふこと。ピストンのキャップが一個だけ違ふパーツだったり、修理の痕なんかが、明らかに後から足されたパーツと共に、生々しく殘ってます。一つ一つを丁寧に仕上げようといふことよりも、「樂器は、鳴ればいいんだ」とする感じが、ひしひしと傳ってきます

 ドイツ人は、良くないところを、まずピシッと言ってきます。「ラッカーが禿げてゐます」「ロータリーの動きが惡いです」などなど。これがアメリカ人だと、「ラッカー80%で、奇麗」「ロータリーの動きは、まずまず」となりさうなのが、面白いところ。アメリカ人は商賣の場で、出來るだけ否定句を用ゐないやうにしてゐますが、ドイツ人はバンバン使ってます。さういふ、品質に對する嚴しさは、賣手として自分の信用に關ると考へてゐるのかも知れません。流石にドイツ製の樂器は、細かいパーツに至るまで、つくりが丁寧で、安心出來ます

 イギリスは、これまたクールでして、口數が少ないんです。商品を褒めることも貶(けな)すことも少ないです。不利なことに對して、余計な口は利かないといふことでせうか。褒めれば「褒めた内容とは違ふ」といふクレームが來るだらうし、貶せば客が寄りつかない、だから、口は災ひの元、余計な口は利かない、第一、いちいち細かく説明する必要もなからう、といふちょっと頑固な感じが傳ってきます。クレームに對しては抗ひもせず、事務的に事を運びます。何かお氣に召さなければ言ってきなさい、といふ感じを受けますね。

 ワタシの場合、取引をしてゐて、一番安心出來るのが、ドイツ人です。品物が届いて、「お、思ったよりいい状態だ」と思ふことが多いです。一番アテにしないやうにしてゐるのが、アメリカ人(笑)。相手の言ってゐる7割くらゐで考へないといけません。一番不安なのが、イギリス人。届くまで、眞相はどうなのかと非常に氣になります。

 勿論、人それぞれですから、當て嵌まらない人もゐることでせう。でも、かうした「風潮」、その國々で、「良し」「惡し」「どうでもいい」とされてゐる「價値」が、樣々な状況と各人の個性に反映されてゐる、といふ風には言へるのではないかと思ひます。それが、その人達の生み出す「物」にも反映されてゐるのではないかとも思ひます。