館長愛用の樂器
* 畫像をクリックすると、拡大表示されます。


 

■ BARITONE HORN - American Type

 CONN CONNSTELLATION (1968年製)
 
マウスピース:VINCENT BACH 5GS, GIALDINELLI 4M

 コーンのアメリカンタイプのバリトンホーン。4ヴァルヴなので、コーンでは「Euphonium」としてゐる。年季の入ったサテンシルバーで澁い(ワタシと同い歳!)。元々はメインテューニングスライドにトリガーが着いてゐたはずだが、前の所有者が、支柱ごと取り外したやうだ。凹みが多く、レシーバーシャンクも半田が外れてゐたり、所々亀裂があった為、大がかりなレストアを行った。お陰樣で、かなりいい状態に回復した!(マウスパイプは痛々しいが(笑)) レシーバーはコーンシャンクだったが、ラージシャンクに付け替へた。また、ピッチが低かったので、メインテューニングスライドをカットした。さらに「焼き鈍し」加工をしたところ、バリトンホーンらしい抵抗感が取り戻され、かなりいい具合に蘇った! さらにさらに、メッキ工房で、ベルの内側を金メッキにした。

 音色は、ユーフォニアムよりも明るくハッキリとしてゐて、ブリティシュ式のバリトンよりも太く豊かだ。ホルンパートとの音色の相性も、とても良い。古いアメリカの曲にソロがある場合や、行進曲、ジャズで使ひたいと思って購入。早速、P.グレインジャーさんの「リンカンシャーの花束」を演奏したが、やはりグレインジャーさんは、この樂器を意圖して「Baritone」のパートにソロを書いたのだ、と直感するに至った。R.ベネットの「シンフォニック・ソング」や、C.ウィリアムスの「ファンファーレとアレグロ」なども、この楽器で演奏したら、かなりしっくり來ると思ふ。勿論、アメリカの行進曲にはびったりの音色で、嬉しくなった(笑)。

 BOEHM & MEINL 型番不明
 
マウスピース:GIALDINELLI 4M

 ユーフォニアムとトロンボーンのベルを備えた、ダブルベルユーフォニアム。第4ヴァルヴでベルを切替へ、音色を變へる。テューバと同じくアメリカのYORKモデルが元になってゐる。製造は1970年代か? ダブルベルの樂器としては、かなり新しい。

  

■ BARITONE HORN - American Marching Type

 Dynasty(型番不明)
 
マウスピース:GIALDINELLI 4M

 マーチングスタイルのバリトンホーン。カラーリングがとても氣に入った(本體ブルーラッカー、抜き差し管、ベル内部は金メッキ!)。賣主は「日本人とは絶対に取り引きしない」とのことで、色々手を使って何とか入手。

 現在ジャズコンボで使用中。目指せマイルス。

  

■ ALTO EUPHONIUM in E♭

 YAMAHA YEH-901ST
 
マウスピース:

 ヤマハアトリエの特注モデル。トロンボーン細管シャンクのマウスピースが使へる。元になったモデルはアルトホルンにしては管が太く、ゆったりとしたレイアウトだったYAH-601ST(現在は生産終了のモデル)。單に、トロンボーンやユーフォニアムのマウスピースのシャンクをアルトホルン用にしたり、アルトホルンのレシーバーをトロンボーンの細管シャンクに合わせたりした場合、上のレ(實音F)が異様に低く感じられたりするのだが、このモデルはそのやうなことはない。恐らく、見えない部分の工夫があったのだと思ふ。第1ヴァルヴにはトリガーも付いてゐて、うはずりやすい音の調整も可能。

 

■ BARITONE - British Type

 STERLING 1050GS
 
マウスピース:DENIS WICK SM9

 ベル〜2番管までは、ベッソンのソヴェリンに似た造りだが、そこからヴァルヴ周りやマウスパイプまではインペリアルに近い曲げ方。ベルはゴールドブラスに銀メッキを施したもの(部分的にメッキが剥がれてゐたので、判明)。そのせゐか、音は上品な感じがする。3ヴァルヴコンペ。

 

■ EUPHONIUM - British Type

 york 3067 Preference (2008年製)
 
マウスピース:Alliance Prestige 3

 周りがハデに鳴る樂器をバリバリ吹き始め、B&H ではバランスが取れなくなってきたため、購入した。york は、舊ベッソンのドイツ工場だったカイルヴェルトの製造によるブランド。Besson のスペックに獨自のアイデアを盛り込んだ樂器を開發してゐる。Preference は、ベッソンで言ふ Sovereign ランク。ソヴェリン BE967 と同じく、ラージベルを採用してゐる。音色はベッソンより少し明るめの感じがする。

 ピッチの癖は、ベッソンと同じで、取り外し可能テューニングスライドトリガーとトリガーガードを付けた。ボトムキャップはBUZZのヘヴィータイプを装着。見た目を派手にしようと、ボトムキャップ、トップキャップ、ウォーターポットをゴールドプレートのものにした。現在、純正キャップをゴールドプレートに加工中。

 BOOSEY & HAWKES 7674 Imperial Besson (1983年製)
 
マウスピース:Denis Wick SM4

 サテンシルバー最後期の樂器だが、状態が非常に良い。海外の樂器店で發見し、取り寄せてからしばらくオークションに出品してゐたが、殘念ながら價格的な折り合ひがつかないので、結局自分で購入することにした(笑)。

 ピストンガイドをデルリン製に交換し、スプリングをソヴェリン用に交換した。廣島の「Rue (舊 "de 管匠")」さんにて、各抜き差し管に「焼きなまし」加工を施した。また、メッキ工房にて、ベル内部、抜差し管等を金メッキにした。さらにさらに、メインテューニングスライドに、トリガーを装着。全容は別ページにて!

 特別研究 Boosey & Hawkes, Besson のユーフォニアムは、こちらにて

 YAMAHA YEP-321SS Imperial
 マウスピース:DEG Brian Bowman Model BB1TB, VINCENT BACH 12C

 國産ベストセラー機のYAMAHA YEP-321。マウスパイプのレシーバーはスモールシャンクだが、ベッソン竝みのボアを備へてゐる。これは通常のラインナップにはない、サテンシルバーモデル。

 畫像にはないが、第5ヴァルヴ使用時に、さらに3/4音ほど下げられる第5ヴァルヴを装着済み。

 BESSON BE765C-2
 マウスピース:Denis Wick SM4

 ベッソンのC管ユーフォニアム。チェコのアマティのラインナップにはC管があるが、ベッソン製はカタログにもニュースにもない。ビュッフェ・クランポンのサーヴィスセンターも、「どうせ誰かが切り貼りしたのだらう」と思ってゐたらしいが、現物を持ち込んだところ、「これは最初からC管として作ったモデルとしか考へられない」と唸り出した。誰のオーダーか、何の目的か、全く不明。大變珍しいモデル。

 下の画像は、通常のBE765-2と竝べてみたところ。

 

■ TENORHORN in B♭ - German Type

 MELTON MEISTERWERKE MW-T24
 
マウスピース:JOSEF KLIER EXCLUSIVE 6D (Midium Shamk)

 WENZEL MEINL 社の最高級ブランド、MELTON の MEISTERWERKE テノールホルン。テノールホルンにしては珍しい4ヴァルヴ装備で、管體はゴールドブラス仕様。

 畫像ではドイツ式のバリトンと見分けが付きにくいが、實際に見て、觸ってみると、テノールホルンの方がずっと細いことが解る。ただし、イギリスのバリトンとユーフォニアム程の差はない。

 よくドイツのテノールホルンはイギリスのバリトンに相當するといふ記述を眼にするが、これは便宜上の説明であり、實際は管の太さも、樂曲における役割もまるで違ふ。どちらかといふと、音色や役割がアメリカ式のバリトンによく似てゐる。

 マーラーの交響曲第7番「夜の歌」第一樂章で、印象的なソロを奏でる TENORHORN は、この樂器を指す。

 

■ BARITON - German Type

 ALEXANDER 150
 
マウスピース:JOSEF KLIER EXCLUSIVE 6D (Midium Shamk)

 ドイツが誇る GEBR. ALEXANDER のバリトン。ベルは他社のバリトンより徑が小ぶり(270mm)だが、かなり太い。フレアが小さいといふ感じだ。ボア15.50mmで、ミラフォンのカイゼルバリトン Premium 竝に太い。

 管體はゴールドブラス、仕上げは今や貴重なノーラッカー仕樣。手の跡が取れなくなるので、プロテクターをつけてある。

 

■ KAISERBARITON - German Type

 

 MIRAPHONE 56L Premium
 
マウスピース:JOSEF KLIER EXCLUSIVE 6D (Midium Shamk)

 ミラフォン社最高級モデル「Premium」。通常のカイゼルバリトンは、段階的にヴァルヴのボアが拡大されて行くのだが、56L Premium は第1ヴァルヴから第4ヴァルヴまでのボアが一定であり、同社の他のカイゼルバリトン 560 の第3ヴァルヴのボアと同じ、15.40mm といふ太いボア(ウィルソンのユーフォニアムよりも太い!)を採用してゐる。新しく採用されたブリッジ式マウスパイプは明瞭なアタックを導き、銅の成分が多いローズブラスで作られた管體が明るくて深みのある音色を作り出す。正に、カイゼルバリトンの最高峰といふ感じがする。

 この樂器で、V.ネリベルの「交響的断章」を演奏したが、バストロンボーンやテューバと一緒に動くところや、ベルトーンなどは、ユーフォニアムで演奏するよりも、動き、響き共にしっくりしてゐた。ドイツ系の吹奏樂曲に限らず、今後、色々な曲の演奏に使ひたいと思ってゐる。

 Premium モデルの仕樣など、この樂器自體についての詳細はこちらの特別ページにて。

 

■ SAXHORN BASSE - French Type

 COURTOIS No.166
 
マウスピース:COURTOIS T2S (Small-Midium Shamk)

 コルトワのサクソルンバス。B♭管で5本ピストン式。第3ヴァルヴは2音下がる仕組みになっている。第5ヴァルヴは3半音下がる。フランスではユーフォニアムとほぼ同じ役割を担ってゐる。

 

■ SAXHORN BASSE (6 Pistons French Tuba) - French Type

 COURTOIS No.68
 
マウスピース:COURTOIS T2S (Small-Midium Shamk)

 コルトワのサクソルンバス。C管で6本ピストン式なので、「フレンチテューバ」と呼ばれる。ラヴェル編の「展覧會の繪」の「ビドロ」のソロは、當時のフランスで「テューバ」として一般的であったといふこの樂器が想定されてゐたと言はれてゐる。通常のサクソルンバスとの違ひは、調性とピストンの數(通常のサクソルンバスは3〜5ピストン)、ピストン操作時の音程くらゐのもので、音色に關しては殆ど變りない。

 サクソルンにはコントラバスがあるにも關らず、なぜこの樂器がフランスのオーケストラで使はれ續けて來たのか等、この楽器については謎が多いので、徒然草に論考をアップした。

  

■ FLICORNO BASSO - Italian Type

 RAMPONE & CAZZANI
 
マウスピース:Denis Wick SM5 (Small Shamk)

 4ロータリーで、マウスパイプのレシーバーは細管、ボアサイズはドイツの Tenorhorn ぐらゐだが、ベルのフレアが巨大で、342mmもあってたまげた。なんだかドイツの Bariton がメキシカンハットをかぶったやうな塩梅だった。しかし、このデザインは面白い。第4ヴァルヴ枝管の巻き方は手が込んでゐるし、ロータリーレバーも星印入りと、冗談みたいなデザインだが、なんだかかういふ思ひ切ったデザインセンスといふのは、イタリア獨特なのかもしれない、とも思った。

 ピッチにはかなり苦勞したが、テュッティでは、他の樂器に負けない、なかなかしっかりした音がする。イタリアの歌曲、スペインのパソドブレのスケールでも、存在感を發揮出來る。

 

■ TROMBONE

 KING 3B Silver Sonic
 
マウスピース:VINCENT BACH 5GS or 7C (Small Shank)

 樂器フェアで、全音の70周年記念 Silver Sonic モデルを試奏して以來、どうしても銀ベルを手に入れたくなり、オークションや中古屋を探し回って、やっと入手した。ベルがスターリングシルバーで、内側は金メッキ仕上げといふ、贅澤な仕樣。バランサーをオールドタイプのコピーに付け替へた。

 通常のイエローブラスのラッカーよりも、深みのある豊かな音がしてゐる。ただ、ベル部分が長いのか、ポジションがいまいち分りにくい。もっとも、ワタシもまだポジションが定ってないのだが(笑)。

 

歴史的樂器のコレクションはこちら

おまけ!

 


ユーフォニアム講座トップページへ


山の手資料館トップページへ



Hidekazu Okayama