Boosey & Hawkes Imperial 改造記

 

Boosey & Hawkes Imperial 1971製造

 ワタシ自身、ちょっと前までは、B&H も Besson も、全く同じ樂器を作り續けてゐるものとばかり思ってゐた。實際は、パーツの材質、サイズ、位置、仕樣などで、色々にマイナーチェンジがされてきてゐる。この他、職人による精度の違ひ、時の運など、正規の改變かどうか、相當に疑はしいものが多々ある。ワタシのこの樂器は、現行の Besson BE968 Sovereign と同機種だが、やはり現行品とは、あちこち異なってゐる。その邊りの研究については、「Besson BE968 Sovereign と同型のユーフォニアム」の項を參照。

 B&H や Besson といふと、以前は「アタックがはっきりしない」「音程が惡い」といふのが代名詞であった。一方、「イギリスの本家ユーフォニアムの音色」「合奏の中では、威力が倍増」といふ褒め言葉もあった。それまで吹いてゐたウィルソンから、Besson New Standerd へと變った時、やはりアタックはボケやすかった。そして、吹いてゐて、どうも腹底に響くやうな感じがしない。そんな中、ひょんなことから巡り會ったのがこの B&H だった。Besson の時に不滿だったアタックのボケが少なく、一音一音が腹底に響く感じで、吹いてゐて氣持ちが良かったので、即決購入したのだった。

 現在は他の方にお譲りしたのだが、ワタシが使ってゐる最中に、色々修理、改造を企ててきたので、或は同じやうなことでお惱みの方への參考になるかも知れないので、列擧してみようと思ふ。


ベル凹み、ツバ漏れ修理、ピストンラッピング

 入手時、ベルには大きな凹みがあった。また、演奏中に、マウスパイプからツバ漏れすることが判った。別の樂器の修理との兼合ひで、大久保の石森管楽器に修理を依頼。錆だらけだったピストンのラッピングもやって置いてくれた。Besson の時に使ってゐたタングステン・ボトムキャップは、そのまま流用した。


ピストンガイド、スプリング、フェルト類の交換

 何分古い機種なので、ピストンのガイドは金属製であった。ピストン操作時にシャカシャカ五月蠅いので、B&H のサーヴィスセンターにて、デルリン(ポリアセタール)製のガイドに交換して貰った。また、スプリングは、ソヴェリン用の、腰のある樽型スプリング(チューブでコーティングしてあるので、シャカシャカ言はない)に交換した。フェルトもペシャンコだったので、B&H サーヴィスセンター特製、ウレタンフォームのものに換へて貰った。これは、いくら水を吸ってもヘタれない、優れものである。


メインテューニングスライドのカット、4番ピストンシリンダーの半田付

 昨今、どこの吹奏樂團に行っても、周りの音程が高いと思ふことが多い。以前のウィルソンの時もさうだったが、この古い B&H では、チューニング管を一杯まで入れても、440〜441Mhzだった。現代のピッチは徐々に上がりつつあり、それは現代人のストレスが原因である!?と聞いたこともあったので、時代に乘り遲れないやう(ウソ)、 B&H のサーヴィスセンターにて、メインテューニングスライドをカットして貰った。パイプの末端にある縁取りも、ちゃんと移動してくれるので、まづ短くしたといふことに氣付かれない。

 4番ピストンシリンダーの半田が取れてゐたことに氣が付き、着け直して貰った。


右手用小指掛け、4番ヴァルヴテューニングスライドのカット

 所屬の吹奏樂團で、P.スパークの「ドラゴンの年」を演奏することになり、難しいパッセージを練習してゐた時のこと。どうも、1番ピストンの反應が惡くなり、しかも、3番ピストンへ指が瞬時に届かなくなってしまった。自宅で鏡に映して自分の指の位置を見ると、人差指の甲側の付け根の方が、随分ベルの方に寄ってをり、ピストンキャップに對して斜めにピストンを押してゐることが判った。その對策として、右手をベルの方に寄せないやう、新大久保のダクに頼んで、小指を引っかけられるリングを装着した。これによって、斜めにピストンを押すことが大分減ったやうで、ピストンの動きは快調になった。かなり便利である。

 4番ヴァルブを使用時、どうも音程が低くて氣になってゐた。よく見ると、ヴァルブから繋がってゐるテューニングスライドの溶接位置が、随分いい加減である。結果、どうも長いやうなので、これもカットして貰った。


ソヴェリン用ピストン、現行ボタントップに交換

 もともとのピストンの錆がひどくなってきたので、BE967 ソヴェリン(デカベルモデル)用のピストンを購入。これは、ピストンのサイズは一緒なのだが、ボア径が通常より大きく設計されてゐる。これによって、上の方の上擦りやすい音域を、正しいピッチへとコントロールし易くさせてゐるとのこと。入手したのは古いタイプのモノだったので、B&H サーヴィスセンターにて、ガイドをデルリンに交換して貰った。確かに、少しは音程が取り易くなった。ついでに、減りが激しかったボタントップも交換した。


ボトムキャップを現行品に交換、純正ウォーターポット装着、ペンシルホルダー装着

 ウォーターポットを取付けられないボトムキャップだったので、自作のポットちゃんをつけてゐた。しかし、どうも B&H のサイズに合はなかったので、現行のボトムキャップを購入し、B&H 純正ウォーターポットを装着することにした。また、トロンボーン用の革製ペンシルホルダーを装着した。


BUZZ ボトムキャップ装着

 1〜3番ピストンに、中島楽器さんの「BUZZ ボトムキャップ」を装着。音の密度が濃くなり、全體的にパワーアップした感じがしてゐる。音程の幅も随分拡がったやうだ。詳しくは、「BUZZ ボトムキャップ」を參照。


現行ソヴェリン用メインテューニングスライド

 Besson の時に購入したものを調整して、 B&H に装着出來るやうにした。鳴りが、かなり今風になった。あんまり神經を集中させなくても、アタックがキマる。ただ、なんとなく味が薄い感じがするので、元のメインテューニングスライドに戻してしまった。室内の小編成で演奏するのには、いいかも知れない。


 ざっと、こんな感じの修理、改造をして來た。これからも、必要に應じたマイナーチェンジがされて行くことと思はれる。



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Hidekazu Okayama